憧れのダーチャ
コロナウイルスの蔓延による社会経済機能の低下はよく戦争に例えられます。
砲弾が飛び交うわけではないので建築物の物理的な破壊や虐殺が伴うわけではありませんが、多くの人の命が奪われ、外出制限によって世界的に社会経済が打撃を受け、医療インフラに負荷がかかることは似ていますね。
そんな時代にはペーパー資産の価値が低下し、実物が幅を利かせます。
旧ソ連から現代のロシアで国民の3分の1以上が保有しているという郊外の農園付別荘(ダーチャ)は理想の疎開先です。
住居と水源と最低限の食料があれば、社会がどんな状況に変わっても何とか生きて行けるという安心感につながります。
平日は都市でガンガン働いて、週末は郊外のダーチャで菜園や住居の手入れをしながらスローライフ。
通信環境が整っていてテレワーク可能な職業ならば、平日も休日もずっとダーチャに疎開(移住)して晴耕雨読の生活をすることもできます。
いいなぁ〜
雑誌の存在感
普段はあまり雑誌を読まないのですが、新型コロナ関連の情報をインターネットとテレビ以外からも収集したく、売店でまとめて購入しました。
まず週刊誌についてですが、一言でいって酷いです。
誰の書いた記事なのかほとんど分からない(アエラは署名があった)。二次情報、三次情報の裏も取らずに憶測を平気で記事にしている。こと新型コロナ関連については週刊誌ですでに情報が古い。
最も酷いと思ったのは、各記事の意見について、その雑誌としての統一見解がないということです。週刊で発行している以上、その週の中での見解は編集長が責任をもって統一するべきです。それが、各記事でバラバラ、場合によっては全く逆の意見を書いている。
皮肉にも統一感が感じられる点は、目先のウケ狙いや世間の不安をあおることを目的として記事を書いていると感じられるところだけです。
週刊誌の発行部数は年々低下しているそうです。それはインターネットの普及が原因だと言われており、確かにそういう面もあるでしょう。しかし、週刊誌衰退の最も大きな原因は、報道の質の低下がネットニュースや質の高いブログ等との比較によってあぶり出されてきたことではないでしょうか。
月刊誌については、さすがに編集の統一感はあるものの、情報の古さは絶望的です。トピックによるのですが、新型コロナのように展開が速い話題については、印刷される時点でもう意味をなさなくなっている記事もあります。直前に差し替えるなど工夫しないと電子版メディアの後塵を拝するのみになってしまいます。
新型コロナの世界的蔓延によってあらゆる社会構造は大きな変化を遂げるでしょうが、出版文化もその例外ではないでしょう。
新型肺炎 感染爆発と中国の真実
時節柄、新型肺炎や関連する書籍ばかりを立て続けに手にとってしまう。
黄文雄氏の「新型肺炎 感染爆発と中国の真実」(徳間書店)を読んだ。 サブタイトルは「中国五千年の疫病史が物語るパンデミック」。なかなかセンセーショナルである。
目次
第1章 新型肺炎はなぜ中国で発生し、世界に拡散したのか
第2章 世界史を変えてきた中国発パンデミック
第3章 疫病拡散の温床となる中国の社会風土
第4章 ずさんな中国の医療衛生の実態
第5章 新型肺炎「COVID-19」が世界に与える影響
第6章 中国発の脅威にどう対処すべきか
本書は「おわりに」が今年(2020年)2月中旬に執筆されており奥付は第一刷が2月29日となっている。類書の中では比較的早い時期に出版された単行本といえる。
まず第1章で2019年12月8日〜2020年2月13日までの新型肺炎の流行の経緯がまとめられている(p.30)。その上で、中国で疫病が発生、拡大する原因として次の9つをあげている(p.32~)。
1 希薄な衛生観念
2 儒教からくる家族主義・自己中心主義
3 ニセモノ文化
4 多すぎる人口
5 何でも食べる食文化
6 農村などでの人畜共棲
7 秘密主義、情報隠蔽
8 皇帝制度、一党独裁
9 不完全な医療制度
これら9つの点について簡単に説明した上で、第2章以下で中国の歴史、社会風土、衛生環境をふりかえりながら、武漢で発生して世界に膨大な被害をもたらしている新型肺炎が必然的な出来事であったことを説明している。
本文中で特に驚いたことを一つだけとりあげる。中国では、医師や医療関係者の社会的地位が非常に低く、所得も相対的に低く、医学部は成績が悪い人が進学する学部なのだそうだ。にわかには信じがたいが、武漢肺炎の初期の報道で患者や家族から医師への暴力が問題になっていると伝えられていたことを思い出した。
筆者は台湾に生を受け、旧統治国である日本と大戦後(というか国共内戦後)に台湾に流入した中国人(いわゆる外省人)の両方の影響を目の当たりにした後、日本の大学と大学院で学んだ評論家である。
過去に数え切れないぐらい疫病を発生させ、世界に蔓延させてきた史実を踏まえて、著者が2月の時点で予測していた中国共産党の隠蔽、対処の遅れ、衛生物資の独り占め、偽薬の垂れ流し、自国の正当化、自国賛美、他国への責任転嫁、WHOの無力化など、指摘していた多くの点は現時点(5月5日)でことごとく的中しているのが怖い。
著者の指摘が事実なら、中国本土は決して感染終息はしていないし、農村部などはそもそも医療機関もなく悲惨なことになっているのではないか。
また、これまでに行った中国への出資と技術協力は報われるはずもなく灰燼に帰することになるだろう。著者の指摘する通り、製造業については国内回帰を果たして雇用を生み出すよい機会なのかもしれない。
また、中国は無力化したWHOを通じて自国の正当化と賛美を繰り返し、感染源として米国の責任転嫁(根拠となるデータは提示していない)を示唆するなどしている。これらは本記事執筆時点(5月5日)で米国をはじめ世界各国が調査中と報道されている。真実は歴史が語ってくれることだろう。
「新型コロナ恐慌」後の世界
経済評論家・渡邉哲也氏の「新型コロナ恐慌後の世界」を読んだ。
内容は中国を取り巻く世界情勢、特に米中経済戦争を中心とした経済摩擦についての話で、大部分は新型コロナの流行と何の関係もない。はっきり言えば、新型コロナ恐慌「前」の世界について書かれている。
目次を眺めてみる。
プロローグ「新型コロナ」恐慌で始まる負の連鎖
第1章 「武漢ウイルス」で中国はどこまで崩壊するか
第2章 アメリカは弱り目の中国を、こうして潰す
第3章 危機を乗り越え日本は繁栄する
第4章 グローバリズムの終焉で逆転する世界
第5章 「新型コロナ」後の世界
米中関係について、日本のメディアはトランプ大統領の発言ばかりを取り上げるが、実際には対中政策の多くは議会が決定している、との指摘にはうなずかされる。
これまでと現在の情勢を把握するのには有用な書籍だが、最も期待した第5章も「コロナ後」の予測はほとんど書かれていなかった。
新型コロナと関係なく読めば非常に参考になるが、題名に惹かれて、新型コロナ恐慌「後」の世界情勢について氏がどのように考えているのかを期待して読むとガッカリしてしまう本だ。売らんがための題名はいただけない。
次作に期待したい。